遺産相続は、法定相続人が法定相続分に従って遺産を受け継ぐのが基本です。しかし、遺言や贈与があると、法定相続人であっても十分な遺産を受け取れなくなることがあります。
たとえば、父親が死亡したとき、子どもには遺産相続権がありますが、父親が遺言で、愛人に全部の遺産を遺贈してしまったら、子どもは遺産をもらえません。このようなときに、子どもが主張できるのが、「遺留分」です。
遺留分とは、一定の範囲の法定相続人に認められる、最低限の遺産取得分のことです。民法は、被相続人と密接な関係のある人を法定相続人と定めて遺産相続をさせることにより、被相続人に近かった人が多くの遺産を引き継げるように配慮していますが、反面、被相続人自身の意思も尊重する必要があるので、遺言や贈与によって財産を処分する自由も認めています。しかし、完全に自由な処分を認めると、相続人の期待があまりに裏切られてしまうので、法律は、一定の範囲の近しい相続人に遺留分を認めたのです。
遺留分は遺言でも侵害できないが・・
遺留分は、遺言に優先します。民法では、遺言によって相続人の相続割合を自由に決定することを認めていますが(民法902条1項)、但し書きにおいて「ただし、遺留分に関する規定に違反することができない」と明示しています。遺言によっても遺留分を侵害することはできないのです。しかし、遺留分を侵害する内容の遺言に、侵害された相続人が何も文句を言わなければ、その遺言はそのまま有効になってしまいます。その場合、せっかく遺留分があっても、その法定相続人は遺産を受け取れなくなってしまうので不利益を受けます。
【まとめ】
自分に遺留分があることがわかったら、できるだけ早く遺留分の請求をすべきです。
※相続法改正により、侵害された遺留分については、金銭で清算できるようになりました。(相続法改正。2019年7月1日施行)
相続人 | 遺留分の割合 |
---|---|
配偶者 | 法定相続分の2分の1 |
子ども | 法定相続分の2分の1 |
親 | 法定相続分の2分の1 (相続人が両親だけの場合、3分の1) |
兄弟姉妹 | 遺留分なし |
遺留分が認められるのは、兄弟姉妹以外の法定相続人です。基本的には、配偶者と子どもと親、及びこれらの代襲相続人です。
遺留分として取り戻せる分は、法定相続分の何分の1、という形で定められています。(右表)
遺留分を計算する際の相続財産は、相続開始前10年間に被相続人が贈与した財産も含めて計算します。
遺留分請求できない人
・兄弟姉妹
・相続放棄した人(→相続放棄についてはこちら)
・相続欠格者※1(ただし代襲相続あり)
・相続人として廃除された人※2(ただし代襲相続あり)
・遺留分のみを放棄をした人
※1相続欠格者になるのは、以下の様な場合です(民法891条)。
相続人が被相続人や同順位以上の相続人を殺害して有罪となった
相続人が、被相続人の殺害を知っても刑事告訴しなかった
相続人が被相続人に無理矢理遺言を書かせた、または訂正させた
相続人が遺言を隠した、または処分した。
※2相続人の廃除が行われるのは、以下の様な場合です。
相続人が被相続人に虐待行為や重大な侮辱行為をした場合
推定相続人に著しい非行があった場合
廃除するためには家庭裁判所への申立が必要です。
遺言によっても相続人の廃除をすることができます。その場合には、遺言執行者を選任し、遺言執行者によって相続人廃除の申立をします。
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